ウマの呼気中水素あよびメタン濃度測定法の検討

摘要

本研究ではウマの呼気中水素およびメタン濃度の簡便な測定法の確立，標準値の作成，採食および年齢の及ぼす影響について検討した。 供試馬として，健康なサラブレッド種28頭およびアラブ種24頭を用いた。 アルミニウム製バックに純酸素を10リットル充填し，フェイスマスクを介して1分間の閉鎖循環式再呼吸により呼気採集を行った。呼気ガス測定はガスクロマトグラフィーにて測定した。 2回採取した呼気ガスの測定値間において有意な相関が認められた（水素：r＝0．95，メタン：r＝0．89）。 平均呼気水素濃度は4．7±5．4（SD）ppm（n＝52），平均呼気メタン濃度は286．6±75．0（SD）ppm（n＝52）であった。 また，呼気中メタン濃度において，採食前1時間（266．6±32．5（SD）ppm）に比較して採食後1時間では（333．5±38．6（SD）ppm）有意に増加した。 年齢別では呼気中水素およびメタン濃度において，加齢に伴う有意な減少が認められ，その変化は特に2才から3才で著しいことが判明した。 以上のことから，本法はウマの呼気中水素およびメタン濃度の測定法として簡便かつ再現性のある有用な方法であることが明らかにされた。 さらに，腸内細菌の異常増殖に伴う腸内発酵，消化吸収障害および消化管運動異常を把握する上で，良い指標となる可能性が示唆された。