軽種馬生産牧場における分娩監視の現状と家畜用分娩監視遠隔通報装置に対する牧場ニーズについて

摘要

日本の軽種馬生産牧場における分娩時の作業の現状を調査するとともに、簡便な分娩監視通報装置の必要性の有無ならびに同装置として必要とされる条件を知ることを目的に、北海道日高地方の23牧場に対して面談形式でアンケート調査を実施した。 調査対象牧場のうち21牧場（91％）で馬房内を監視するモニターカメラを設置しており、これらの牧場では少なくとも過去2年間で、分娩の発見の遅れが原因による生産馬（延べ約500頭）の事故は全くみられなかった。 また事故にはいたらなかったが発見が遅れたケースの大部分は、日中の放牧地における分娩だった。 馬の分娩は破水から新生子の娩出まできわめて短時間（平均25分程度）で終了するため、放牧地で分娩が始まった場合に、発見が遅れる可能性が高いものと推測された。 簡便な分娩監視通報装置が開発された場合、条件次第ではそれを利用する可能性があると答えた牧場は18牧場（78％）であった。 一方、2牧場は馬の分娩を知らせる分娩通報装置（米国製および豪州製）をかつて利用したことがあるが、特に衛生面（馬糞の装置への固着、縫合痕の化膿）と脱落のしやすさから、1年で使用を止めていた。 装置の使用を考えている牧場が指摘した分娩監視通報装置が満たすべき条件としては1）放牧地で使用が可能なこと（最大4ヘクタール）2）少なくとも破水時までには通報があること3）十分に信頼性があること4）操作や着脱が簡便なこと5）脱落しないことなどがあげられた。