移行期牛シンドロームについて考える2

摘要

前回に引き続き，Ohio州立大学のB. Welkerの「移行期牛シンドローム（原題：Transition Cow Syndrom）」を基に，後産停滞と低カルシウム血症の発生原因，治療，予防について考えてみたい。 胎盤は分娩に近づくにつれて成熟していき，宮卓の結合織の膠原化が進む。 成熟の最終段階は分娩直前の5日間でエストロジュンレベルの上昇により迎える。 分娩後は，子宮の収縮とともに胎盤が剥がれ排泄が始まるのである。 最終成熟の5日以上前に分娩が起こると後産停滞の発生率が高くなる。 後産停滞は難産，双子，流産，分娩誘起，低カルシウム血症，ビタミンEとセレニウム欠乏，帝王切開などの時に発生しやすい。 アメリカの酪農場での後産停滞発生率は平均で10～20％である。 後産停滞の80％は臨床症状を伴わないが，残りの20％は中程度から重度までのいろいろな症状を室し，時には死亡することもある。 さらに，後産停滞や産祷期の中毒性子富内膜炎は，分娩後の低カルシウム血症，ケトーシス，第四胃変位などの多くの疾病の発生と関係している（図-1）。