牛の機能的幽門狭窄（第四胃逆流症候群）

摘要

初産牛が分娩後58日に第四胃左方変位に 罹患し，直ちに起立位右 腰部切開手術を受けた。 牛は速やかに回復したが，手術後3週間から食欲減退がみられ，手術後4週間には食欲が廃絶したため往診した。 牛は体温38．8°C，心拍数100／分（不整），呼吸数70／分で中等度の脱水症があり，元気がなく，起立に難渋した。 第一胃容積は小さく，第一胃の層状構造は存在するものの，ルーメンマットはごくわずかで，第一胃全体は水様で軟らかかった。 排糞は認められず，直腸内にも宿便はみられなかった。 右下腹が中等度に膨満していたが，直腸検査で第一胃腹嚢や腸管の拡張ほ認められなかった（腹腔右下の膨満は拡張した第四胃によると考えられた）。 これらの所見は典型的な第四胃幽門からの移送障害と考えられ，検査と治療のため直ちに牛を大学の診療室に搬入した。