輸液療法の実際26酸塩基平衡補正輸液剤7

摘要

子牛の下痢症では，脱水に伴い腎血流量が低下するために重炭酸イオン（HCO_3~-)の再吸収が低下し，その結果として子牛は代謝性アシドーシスを呈する。 確かに，代謝性アシドーシスが増悪すれば，または乳酸アシドーシスなどで常に酸が産生されている場合には，ァシドーシスが原因で子牛が死に至る可能性が高い。 だからといって，子牛の下痢症に対して闇雲に酸塩基平衡の改善を行うことは疑問である。 子牛の下痢症における代謝性アシドーシスは，“脱水による二次的な病態”であることを臨床獣医師は再確認するべきである。 また，前回までの「酸塩基平衡補正輸液剤」でも再三繰り返しているが，酸塩基平衡を急激に補正すると，例、えばアルカリ化に伴って血祭中イオン化カリウムやカルシウム濃度が低下し，NH_4~＋が遊離型のアンモニアに変換されるなどの様々な生理作用を伴う。 最悪の場合には，テクニー，高アンモニア血症，Paradoxical CSF acidosisなどの望ましくない症状を“医源的に"生じさせる。 したがって人医療分野では，代謝性アシドーシスの病態がきわめて重篤（pH＜7.100）であり，かつ緊急的対処が必要なときにのみ重曹注を緩序に静脈内投与することが推奨されている。 残念ながら，産業動物医療分野における重曹注の子牛への応用法に関する適切ながイドラインほまだ検討の余地がかなり残されている。 また，我が国で市販されており，産業動物医療分野で応用可能な重曹注は7.0％の高張液であり，これを子牛に直接投与することば急激な血巣浸透圧濃度の変化を伴うので，1.25～1.40％の等張な重曹液の開発が待たれるところである。 今回は，日常診療における重曹注適用の一助となることを期待して，子牛の下痢症における重曹注の使用方法について紹介する。