水稲の打込み式代かき同時土中点播栽培における播種後落水およひ施肥条件か出芽、苔立ちに及ぼす影響

摘要

九州沖縄農業研究センターで開発した打込み式代かき同時土中点播方式で湛水土中に播種した水稲の出芽、苗立ちの実態を解析し，水管理を中心とした出芽、苗立ち安定化に向けて検討した。 出芽の遅速と出芽後の生育の関係をみると，早期に出芽した場合，最終的な出芽率は高まって初期生育も促進されたが，出芽が遅れた場合，最終的な出芽率は低下して初期生育も遅れた。 また，播種後，湛水管理を続けると，出芽後も鞘葉の伸長が続き，第1葉、第2実の生育が遅延した。 一方，落水管理は，気相の拡大により通気性を向上させたため，出芽後，鞘葉，第1葉は伸長を早めに停止し，第2葉の抽出は早まり，茎葉と根の乾物垂が増加した。 播種後の落水日数と生育の関係をみると，播種後の落水完了が遅れるほど通気性の改善がなされず，出芽、苗立ちが不良となった。さらに，入念な代かきは，土壌の団粒構造をより破砕して通気性を低下させ，落水管理の生育促進効果を損なった。 施肥との関係では，打込み式代かき同時土中点播方式は，種子と粒状化成肥料の同時打込みが可能であるが，種子と肥料が近接するため，出芽率は低下し，地上部、地下部の初期生育が遅れる傾向を示し，基肥由来のアンモニア態窒素濃度が高まるにつれて種子のグルコース含量および出芽率はともに低下する傾向を示した。 この場合，播種後の落水管理により出芽率が改善され，地上部、地下部の初期生育も回復し，同時施肥による初期生育の遅れが解消された。