ミツエビナミハダニTetranychus takafujii Ehara＆Ohashiの殺ダニ剤および殺虫剤感受性

摘要

ミツエビナミハダニTetranychus takafujii Ehara＆Obashiは近畿地方（大阪府，京都府，兵庫県）および東京都の一部でナス，ワルナスビ，イヌホオズキに寄生することが確認されていた種で（Ehara＆Ohashも2002；大橋ら，2003），ナス科植物にのみ寄生するとされている（小坪ら，2004）。本種は体色が宋～赤である点や形態的特徴および寄主選好性等の点で，アフリカや南欧の施設栽培トマトに大きな被害を与えているTetranychus euansiBaker＆Pritchardに類似している。　鹿児島県においては2007年に露地栽培のミニトマトで本種の寄生が確認され，ミニトマトが枯死するほどの被害が観察されている（鹿児島県病害虫防除所，2008；二宮ら，2008）。本種はTetranychus属の中で最も高い増殖能力を持っている（小坪ら，2004）ことから，一旦ナス科植物囲場で増殖させてしまうと，防除は困難になると考えられる。また，T. evansiに対しては，トマト上に放飼したカプリダニ類が有効に働かないことが報告されており（Kolleretal．，2007），現在でも有効な天敵の探索が続けられている（Furtado et al．，2007）。このことから，ミツエビナミハダニによるトマトへの加害がわが国で広がった場合には，生物的防除が成功する可能性は低く，化学的防除での対応が必要になると考えられる。そこで本研究では，本種に有効な殺ダニ剤を明らかにするために，トマトとミニトマトのハダニ類で登録のある殺ダニ剤を中心とし，ハダニ類に対する効果が知られている各種殺虫剤に対する本種の薬剤感受性検定を行った。