牛乳生産の減産計画時代を迎えて －いま、求められる牛乳生産供給システムの見直し、人工授精技術者の役割－

摘要

わが国の酪農は国際化の進む中、規模拡大、コスト削減や家畜生産性の飛躍的向上により急速に成長してきた。 戦後60年間に酪農経営の規模は経産牛平均60頭となり、1頭当たりの乳量は7，000kg、検定牛では9，000kgを超えるようになり、EU、アメリカに比較し遜色なく世界的水準に達し、乳量、乳質改善によるコスト削減を図り、経営合理化に果した成果は大きいとされる。また戦後の酪農はさまざまな曲折を乗り越え多くの困難や試練と格闘した農家、生産者の努力と、関係機関、団体の支援活動や試験、研究機関の技術面のサポートなど総合的な成果により農業部門唯一の優等生といわれる基盤が形成されたが、酪農畜産を支えた行政、補助金や制度資金、価格政策などの力は大きい。とりわけ不足払い制度の発足した昭和40年代以降は、急速に近代化の道を歩み、右肩上がりの成長路線を続け、規模の拡大、機械化、施設化が進み、生産性に大きく寄与する一方で、今日の環境問題や過剰投資による負債にあえぐ経営不振農家、多くの倒産廃業や離農農家を生み、牛乳の生産基盤、経営の体質強化や需要に応じた生産、供給体制の構築が模索されている。