子牛の白痴－原因論からのアブロ－チ－

摘要

黒毛和種子牛の白痢は，臨床家および農家にとって，いつの時代においても大問題である。 本誌においても多くの総説等が記され，臨床家の間にも十分な知識が行き渡っているものと思われるが，その発症率や死亡率は一向に減少の兆しが見えない。 そこで本稿では，その原因について再度洗いなおし，その中でも特に，いわゆる“母乳性白痢”について少し詳しく述べることとする。 子年の下痢症のうち，糞便中に不消化脂肪を多く含み黄色～白色の下痢便を排出する症候群は白痢と呼ばれ，大腸菌，ロタウイルス，コロナウイルスが主な原因とされている。 これら子牛白痢の発生日齢について，AcRESらは，40頭中32頭（80％）の子年で生後10日以内に下痢の発生したことを認めている。 DELEEUWらは，子牛の下痢症を早発性下痢と遅発性下痢に分類し，毒素原性大腸菌K99株に起因する下痢の大部分は生後3日以内の早発性下痢に含まれるとしている。 また，KROGHは1，814頭の下痢症子年あるいは死亡子年から採材した糞の微生物学的検索を行い，毒素原性大腸菌は16．4％から検出され，それらの子年の日齢はほとんどが生後1週間以内であったと報告している。ALLENらは3年間で793頭の子年を剖検しての調査で，大腸菌は生後5日以内，ロタウイルスは1～4週齢の牛から主に分離している。 SHAHは1週齢の下痢症子年の糞便の30％からロタウイルスを検出している。