有機塩素系POPs農薬の作物残留問題

摘要

本セミナ一室の第4回および5回では，有機塩素系溶 剤および原油といつた工業由来の有機化合物による汚染 について，分解微生物を利用した浄化技術，いわゆる 「バイオレメデイエ一ション」を中心に解説されてきた. ここでは，筆者が身を置く農学分野において最近問題に なっている，有機化合物による作物汚染と，その対策技 術について概説する. 昨今，国内のいくつかの地域において，キユウリ果実 から食品衛生法に定められた基準値(0.02 ppm)を上回 るディルドリンが検出された.また，最近では，カボ チヤ果実からも構造が類似したヘプタク口ル類が基準値 (0.03 ppm)を超過して検出されている.これらは，「食の 安全」を揺るがす問題として社会的な関心を集めるとと もに，産地では出荷の自粛，広範な土壌、作物検査など の緊急対応を余儀なくされている.筆者らの研究ダル一 プでは，このようなゥリ科野菜のディルドリンおよびへ プタクロル類による汚染を低減するための技術開発に取 り組んでいる.