水産無脊椎動物の育種研究の現状と展望

摘要

真珠養殖は日本が世界に誇る無脊椎動物の利用技術です。 養蚕業に似て品種改良の可能性が期待されます。 ただ遺伝情報はゲノムの時代にはほど遠く、研究はまだ始まったばかりの観ですが、真珠の品質や感染症耐性についての選抜育種、交雑育種の古典的な試験が行われています。 その他の貝類、エビ、カニ類、ウニ、ナマコ類等の多様な養殖対象種や野生集団の研究でも、独自の目標をもって、選抜育種や資源管理などのための基盤研究が行われています。 水産物のなかでも無脊椎動物の利用は多種多様であり、多くの育種研究の可能性を秘めています。 ここではアコヤガイの研究を主に紹介するとともに、他の無脊椎動物も含めて、品種改良的観点、野生集団の育種的管理や遺伝資源の観点から行われている研究の現状と展望を概観します。