変異原検出法の発展

摘要

化学において分析化学は基幹的学問である。ドルトン の原子仮説も分析化学的データがあって導かれたし，ワ トソンとクリツクのDNA二重らせん構造提唱も核酸の 塩基組成分析から導かれたシャルガフの法則があったか ら可能となった。一方，分析化学は存在する物質の種 類?量?状態をできるだけ厳密に測定する技術を発展さ せてきたと同時に，計測?分析する対象の幅を広げてき た。従来，農学や医学?生化学の領域で独自に開発?利 用されてきたバイオアツセイ（生物検定法）や電気化学 との相互作用で発達してきたバイオセンサーなども分析 化学の領分であり，そのような広域分野のテ一マに測定 技術理論を熟成させてきた分析化学者が積極的に取り組 むことは科学技術全体の発展に対して意義深い。本稿で は，これから分析化学者がますます“バイオアツセイ” に関心を広げ，積極的に取り組まれることを期待しつ つ，バイオアツセイの一種である「変異原検出」につい て，とりわけ，筆者らが開発した技術「ゲノムプロフイ リング依存変異原解析（GPMA)法」について詳述し， この分野の特性を浮かび上がらせたい。このテーマの総 説がこれまで“ぶんせき”において取り上げられること がほとんどなく，この分野の技術進歩がさほど急速では ないことから，やや長い時間スケールでの解説とした。 おおよそ1970年から2013年までの約40年間，特に最 近の顕著な進歩を足速に扱うことにする。