アジアレな朋属植物遺伝資源研究をどう進めていくのか

摘要

今世紀は多様性の時代であるといわれる。 しかし、人類はますます限られた種類の作物に食料生産を依存するようになっている。 主要作物品種の遺伝構成も均質化の一途をたどり、かって地域の農民が長い年月をかけて作り上げてきた地域固有の多様な在来品種も減少の一途をたどっている。 限られた資源に依存した食糧生産には、限界と危険が伴うことは明白である。 作物育種では、新しい変異を探索し、あるいは新たに作り出して、育種素材として新品種の開発に利用する。 このことにより食糧生産様式の多様化に寄与する必要がある。 多様な育種目標を達成するためには、多様な育種素材が不可欠である。 これまでの育種で利用してきたのは、様々な地域環境に適応した在来品種の多様性であった。 Harlan and De Wet（1971）の唱えた第一次遺伝子供給源、すなわち種内変異の利用である。 これからの育種では、種内変異を超えた種多様性の利用が重要になってくるであろう。 従って、それを支えるための遺伝資源研究も近縁野生種の収集、多様性の理解とその保全、有用特性の評価とその利用に重点が置かれるべきである。土地開発、都市化、環境汚染、県境変動などによって野生種の遺伝的浸食は確実に進行している。 早急な多様性の保全と情報の蓄積が望まれる。