胸腔鏡下食道癌根治術の進歩

摘要

胸腔鏡下食道切除は肺合併症の減少,手術侵襲の軽減を目的にCuschieriらによって1992年から開始された。 本邦では赤石らにより1995年から導入された.しかし,1990年代の後半に欧米では胸腔鏡手術の利点が無いとの報告が多くあり,施行施設が限定される様になった。 これは20数例の経験に基づいた報告で手技習熟以前の結果と思われる。 一方,リンパ節郭清に重点を置く本邦では種々の手技の工夫がなされ,経験数の増加による習熟効果による利点が明らかとされるようになった。また2002年4月に社会保険診療報酬に収載されたこともあり,現在,急速に普及している手技であるが,リンパ節郭清の程度など施設による差があるのも事実である。 しかし,これは通常開胸手術でも同様で,胸腔鏡手術によるものではなく,食道癌根治術に随伴する問題と思われる。 胸腔鏡下食道癌根治術の導入10年以上が経過した現在,種々のデータが蓄積されつつある。 以下,胸腔鏡下食道癌根治術の現況と問題点について述べる。