生活機能障害の経過からみた高齢者在宅医療に関する検討

摘要

【目的】在宅療養を行っている高齢者の生活機能障害の変化を経時的に観察し,以下の2点を明らかにすることを目的として検討を行った。 ①医学的介入が有効である側面を明らかにする。②ケアを行う上での示唆を得る。 緦澫螭瑜臃椒ā?996年4月から1998年6月の間に当院において訪問診療を行った高齢患者39名(男性19名,女性20名,訪問開始時年齢:57～95歳,平均76.9歳)を対象とした。 疾患の内訳は,神経疾患29名,呼吸器疾患6名など。 生活機能障害の進行様式を,①急速進行型9名, ②緩徐進行型10名, ③階段進行型19名の3型に分類して検討を行った。 【結果】①脳血管障害患者では再発を繰り返してADLが低下することが多く,廃用性変化の防止とともに二次予防の重要性が示唆された。②慢性呼吸不全患者の多くはADLの自然経過が緩徐進行型を示すが,感染を繰り返すことにより階段進行型となりADLの低下が加速されることがあり,呼吸器感染症に対する適切な治療,包括的呼吸ケテが重要である。 ③今回対象とした39名のうち13名において転倒を契機としてADLの低下を認めた。 骨粗鬆症,痴呆,脳血管障害患者では高率に転倒を生じ,一度ADLが低下すると以前の状態への回復は困難なことが多く,包括的転倒防止ケアが望まれる。 窘Y論】生活機能障害の変化を経時的に観察した結果,在宅療養を行う高齢者における予防医学的アプローチ,適切な早期治療,包括的ケアの重要性が示唆された。