ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子を主成分としたTrafermln~R (フイブラストスプレー~R)を用いた胃癌術後難治性膵液瘻の治療

摘要

膵液瘻は胃癌術後の重篤な合併症の一つであり，多くは保存的に治癒するが，時に難治性となり治療に難渋することも多い。今回われわれは,液漏による難治性瘻孔に対して,ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子（basic fibroblast growth factor: bFGF)を主成分としたTrafermin~R (フイブラストスプレー~R)を用いて治癒し得た症例を経験した。症例は67歳，男性。噴門部早期胃癌（TlbNOMO, Stage IA)に対して腹腔鏡下噴門側胃切除術，D1+郭清を施行した。術後約3か月半に及ぶ難治性膵液瘻となった。Trafermin~Rを50 pg/日ドレナージチュ一ブから瘻孔内に注入したところ，約3週間で瘻孔閉鎖に至った。適応を十分に検討すれば，Trafermin~Rは膵液瘻に対する新たな治療戦略の一つになると考えられる。