名鉢鑑賞: 道光帝期の古渡南京色絵外縁木瓜式鉢

摘要

本器は中国清朝、道光帝の治世(一八二ー-五〇)時代に焼成された作品である。本器に捺された落款大清道光年製は盆栽界に継承される樹鉢には珍しいもので、この落款を目にすることも極めて少ない。本器にしても長らく蘭の蒐集家が所蔵していたもので、蘭鉢として継承されていた。中国清朝における南京(景徳鎮)窯の最盛期は清代初期の康熙-雍正-乾隆帝の頃で、清朝成立から隆盛期に至る時代と重ねることができる。南京は宋代から窯業が盛んな地域で、明代や清代には世界を市場とする一大生産地となった。清朝の康熙帝は戦乱によつて疲弊し活力を失っていた南京の官窯復活に取り組んで技術革新を推奨し、中国陶磁器界は歴史的な大発展を遂げる。康熙帝の時代にはまだ明代の職工が数多く残つており、宋-明と継承された技術が途切れることなく伝わったことが大きかったのだろう。南京の陶磁器は世界的に高く評価され、輸出によつて外貨の獲得と国力の増強に大いに貢献したとされる。