チヤを加害する新害虫「チヤトゲコナジラミ」

摘要

チヤの新害虫ミカントゲコナジラミ（チヤ系統）は，2004年に京都宇治のチヤ園で初めて記録され（山下ら， 2005)，その後の甚大な被害の実態と分布の拡大により， 農林水産省「チャの新害虫ミカントゲコナジラミの発生 密度に対応した戦略的防除技術体系の確立」のプロジェ クト（以後本プロジェクトと略記）が2009年に開始さ れた。その後の被害拡大と防除対策や生態については， 本誌上に最近紹介された（佐藤，2011)。チヤの害虫ト ゲコナジラミの大発生は Han and Cui (2003)によると， 中国海南省や長江の中-下流域のチヤ産地で1960年代 中ごろ，70年代末，80年代末から90年代初めに確認さ れている。1989年には中国の主要なチヤ産地の全域に 分布拡大して甚大な被害を与え，今後も再び大発生の可 能性があるという。発生動態や防除技術等に関して中国 では相当数の研究成果が1990年代から今もなお報告さ れている。このチヤの害虫は黒刺粉虱あるいは茶黒剌粉 虱と称され，カンキッ害虫のミカントゲコナジラミ Aleurocanthus spiniferus (Quaintance)の学名が—貫し て用いられてきた。