原色図鑑一外来害虫と移入天敵一

摘要

ヒマラヤの巨大な山塊に抱かれたネパールの 首都カトマンズは，奄美大島とほぼ同緯度にあ りながら，気候的には四国や九州と大差なく， 温帯域にあると考えてよい。夏は涼しいが，厳 寒期には氷点下になる日もあらわれる。カトマンズにはかって，足かけ3年にわた り住んでいた。この近辺の生物相は，基本的に 温帯要素で構成されるが，多聞にもれず，熱帯 要素が徐々にしみ込みつつある。例えば日本で は琉球列島を分布北限とする昆虫が，氷河の消 失に呼応するかのように，カトマンズで増加傾 向にある。ヒマラヤ南麓には，インド亜大陸へ つづく亜熱帯平原が拡がる。熱帯起源の生物が， この平原から物資とともに力トマンズに運ばれ るのは茶飯事だろうし，陸続きの恩恵がある以 上，動物が自力で斜面を登攀するのに，さほど の困難はないであろう。