千葉県柏市の東京大学柏キャンパスにおける放射能汚染の 実態と芝生の除染試験

摘要

福島第一原発事故による放射能汚染のホットスポットと なっている千葉県柏市に位置する東京大学柏キャンパス内 の緑地において，汚染実態調査を行うとともに芝生の除染試験を行った。2011年8-10月に測定したキャンパス内の 地上1mの空間線量率はほぼ0.3-0.6muSv/hの範囲にあり， 芝生や森林の面積当たりの放射性セシゥム汚染景は39-137 kBq/m~2であった。芝生地の放射性セシウムは表層0-1cm の土壌粒子に最も多く含まれ（35-107 kBq/m~2),芝の植 物体およびサツチに含まれる量に比べてはるかに多かった。 除染方法として，リールモアとロータリーモアを用いた芝 刈りとサツチの吸引（A方式）と，ソッドカッターによる芝 生の剥ぎ取り（B方式）とを行い比較した結果，A方式によ る空間線量率の低下はわずかであったのに対し，B方式で は約0.4-0.6 muSv/hだった地上5 cmの空間線量率が0.11 -0.21muSv/hまで低下した。このことから，千葉県東葛地 域の芝生地の除染には，ソッドカッターを用いた芝の剥ぎ 取りが最も簡単かつ有効な手段であると考えられた。一方， 雨どいからの飛沫が降り注ぐ約5 m~2の範囲において，表層2 cmで100 kBq/kg,深さ4-6 cmで10 kBq/kg以上の土 壌汚染がみられ，深さ6 cmまでの表土の入れ替えを行って も地上5 cmで0.5muSv/h前後までしか低下しなかった。