光合成細菌の進化と生育環境

摘要

生物にとってエネルギーは生存のために不可欠であり，利用できるエネルギー量が生物の繁栄と進化を規定している．光エネルギーを利用する光合成能力の獲得で初めて，生物界は大量のエネルギーを利用できるようになった．さらに，光合成の進化の過程で水からの電子を還元力として利用するようになって，光エネルギーの利用量が拡大した．光合成は細菌の中で生まれ，細菌の中でほぼ完成された．そのため，エネルギーの面から生物の進化を考える場合，光合成細菌の進化が重要である．植物の光合成を行う葉緑体も，その起源をラン色細菌の細胞内共生に求めることができ，光合成の基本機能の面ではラン色細菌と同一である．真核生物の呼吸を行うミトコンドリアも，ある種の光合成細菌が光合成能力を失った後，細胞内共生して生七たと考えられている．光合成細菌と生育環境との関係を実験的に取り扱うことで，細菌時代の生物の進化と光合成の進化を探ることができる．