アジア広域大気汚染と東アジア酸性雨モニタリングネットワークの進展

摘要

わが国のオゾン，微小粒子PM_(2.5)などによる大気汚染問題に対する今後の対策を考えるとき，アジア広域大気汚染を考慮した卜ップダウン的な見方が必要になってくるものと思われる。東アジア酸性雨モニタリングネットワーク（EANET)は酸性雨をキーワードとして発足したが，発足後10年が経過し，アジア広域大気 汚染の視点からの新たな展開が望まれている。「大気汚染」は10年ほど前までは公害時代の過去のものというィメージが強く，地球温B爰化などの地球環境問題に 比べて研究的にも政策的にもダーティ、 ィメージが強かった。たとえば，「大気 汚染学会」が「大気環境学会」に名称変 更したのは1995年のことである。しか し，環境問題においても旬の言葉は時 代と共に10-20年サイクルで変転す る。21世紀に入ってからは，地球温 暖化、気候変動に成熱感が漂い始めた のと軌をーにして，大気汚染が新たな 地球環境問題としてクローズアップさ れ，国際的にも政策研究，科学研究の 面で再び関心を引くようになっている。 大気汚染へのこうした新しい視点は， グローバル大気汚染，半球汚染，リージョナル（領域）汚染，都市大気汚染 がシームレスに分かちがたく結びつい ており，従来，国内的な対策が主であつ た大気汚染対策を国際的な対応の議論 と結びつけないと本当の解決が難しい という局面に直面していることから生 まれてきている。