既存の汚水処理施設の簡易改修による 硝酸性窒素濃度低減例

摘要

高濃度の硝酸、亜硝酸性窒素を高濃度に含 む水を摂取すると、乳幼児の場合は、メトへモ グロビン血症を引き起こす可能性があることが報告されています。それに伴い、平成13年に水 質汚濁防止法に基づく排出基準の健康項目に 硝酸性窒素等（アンモニア、アンモニゥム化合 物、亜硝酸化合物および硝酸化合物）が追加さ れました。排水基準は100mg/L以下です力、 畜産分野に関しては、即時に規制に対応するこ とが困難とされ、暫定排水基準値が設けられ ています。平成25年7月の見直しでは900mg/ Lであつた暫定排水基準値が700mg/Lまで弓I き下げられました。今後も本来の基準値である 100mg/Lへ向けた引き下げが図られることにな ると思われます。硝酸性窒素等への対応は、汚 水処理施設を更新したり、増設したり、後段に 高度浄化処理を組み入れたりするのに多額の費 用がかかるため、なかなか進まないのが現状で す。また、養豚場に設置されている汚水浄化 処理施設は、汚水に含まれるBODやSSを放 流可能水準まで低減できても、硝酸性窒素を 100mg/L以下することができないBOD対応型 が多いと考えられています。BOD対応型は、活 性汚泥による好気的な処理によってBOD等を 処理しますが、積極的に窒素を除去する機能は ありません。窒素成分を窒素ガスとして大気に放出させる「脱窒」には無酸素状態での処理が必要です。BOD対応型でも、曝気槽に余裕が あり、きちんとした設計に基づいた施設であれ ば、比較的低コストの改修によって窒素除去が 期待できる窒素対応型の施設にできます。軽微 な改修による硝酸性窒素等濃度の低減につい て畜舎排水処理における実用的な窒素除去改 修パターンは、処理効率、安定性、コスト、維 持管理を考慮し、表1の5つのパターンが考えら れます。当研究所では、4件の畜産農家におい て改修パターン①、②、③、⑤の実証試験を 行いました（文献1、2、 3)。今回新たに、改修 パターン①の方法を用いた改修を試みたので、 その事例を報告します。