林野サイドからみた牧野に関する研究、行政対応100年の要諦（23）－里山活用で揺れた畜産と林業，茨城県小松沢放牧地の場合－

摘要

里山、奥山の活用を巡る明治中期以降の100年間は，林畜の閲ぎ合いであり，多賀駒の小松沢放牧地は真っ先に馬産限定地に指定された。 だが，戦後になって国有牧野の解放を勝ち取った途端に，放牧地の半分に造林されるなど，里山の放牧地は畜産と林業の狭間で揺れ動きながら，両業とも精彩を失っていった。 つまり，当放牧地は里山畜産活用の歴史の縮図であった。その顛末は，歴代の林業試験場高萩試験地の関係者が見続けており，放牧地は高萩試験地開設50周年を記念した要覧の表紙を飾った（写真1）。