乳牛の周産期病予防と栄養管理

摘要

最近30年ほどにおける乳牛の栄養研究の進展どして移行期とくにclose－up期の栄養生理学と疾病予防があげられる。 乳牛の疾病の約75％は分娩後の1ヶ月間に発生し，分娩前の採食減退に原因があるという知見が増えてきた。 周産期乳牛の反応には牛個体間で変化が大きすぎるという理由で1980年代以前には当該期の研究は無視あるいは避けられがちであった。 移行期の核心を概括するのは難しいが，ホメオレシス（homeorhesis）に関するBaumanらの論文（1980）に始まって高位生産乳牛の代謝適応の解明に研究の焦点があてられ，多くの疾病や生産阻害面から栄養学への認識が高まってきた。 こうして移行期乳牛の生物学研究は北米を中心に全盛期をむかえ，とくに最近10年余においては周産期における肝臓，脂肪組織，骨格，筋肉，乳腺での代謝関連に研究の勢力が注がれてきた。また高泌乳牛の代謝、栄養学の発展には牛ソマトトロピン（bST）製剤（アメリカでは1993年暮れ認可）に関する膨大な研究と生産的応用も大きく貢献し，その成果は乳牛の採食，生産さらに健康に関するデータベース構築にも大きく寄与してきた。