垂直磁気記録用磁性材料I/プロローグ：垂直記録開発前の磁気記録材料

摘要

磁気記録技術は発明されてから100年を経過しても，なお，発展し続け，今日のユビキタス情報社会でますます輝き，存在感が高まっている.新しい競合技術の挑戦を受けながらも，磁気記録技術は利用領域を大幅に広げ，コンピュータ用大容量ストレージはもとよりモバイル系情報端末の携帯電話，電子財布，カーナビ，ホームサーバ，テレビ用録画機器（VTR，HDD）など，家庭や個の情報化の主要なツールとして成長を遂げた.数ある電子的情報蓄積技術の中で磁気記録技術の取り扱い情報量は群を抜いて多く，今後ますます市場拡大することが期待される.その理由は技術の確かさに加え，社会の要請に時代を超えて絶え間ない技術開発で応え続けていることによる．東北大学·電気通信研究所にて岩崎俊一教授が1975年に着想され1977年提案された垂直磁気記録方式ではヘッド·メディアともに新しく考案された1）～3）．従来方式の限界を超えてさらなる性能向上をもたらす方式上の大きな革新で，磁気記録技術史上，最も大きなイノベーションの一つと位置づけられる．