国境を超える生産工程·タスクの分業の実態に迫る：国際的生産·流通ネットワークの展開と実証分析

摘要

企業活動のクローバル化とともに国際取引チャンネルは多様化し，それまでの「産業単位」での国境を越えた分業から「生産工程·タスク単位」での分業へ，そして原材料·完成品中心から部品·中間財中心の貿易パターンへと進化している。こうした進化とともに，1980年代，とりわけ1990年代以降，発展してきたのが，いわゆる「国際的な生産·流通ネットワーク」である。いまや現実経済における国際的生産·流通ネットワークの存在の大きさは誰もが認めるところだろうが，これを研究テーマとして取り扱うことは，学術的な意味での理論的·実証的研究の発展のみならず，実物面での様々な政策的議論にも直結する有意義な示唆を与えてくれるという点でも，非常に重要である。そこで，本稿では，経済学の視点から，生産ネットワークに関する理論的な枠組み·概念やこれまでの実証研究を概説するとともに，誰もが入手可能なデータに絞って，生産ネットワークやそれを左右し得る通商政策に関連したデータの入手·加工方法を紹介していきたい。