樹木年輪年代学的手法による樹木の気候応答研究

摘要

木材として用いられる木部の形成は様々な因子に影響を受ける。その因子としては，遺伝（個体差ゃ樹種）や樹齢などの樹体内部の因子と気象や生物害，撹乱などの樹体外部の因子がある。樹体内部の因子は樹体の活動を全体的に制御している。一方，樹体外部の因子は木部形成が行われる形成層の活動だけではなく，その原料となる同化産物を生産する葉や水分や無機塩類を吸収する根で行われている作用にも影響を及ぼす。その影響が組織構造や年輪構造に反映され，さらには木材の物理的ならびに力学的諸性質に影響を及ぼしているといえる。したがって，樹木の生物としての能力を知る，木材を生産するための林木を育成する，また生産された木材を材料や原料として利用するためにも，樹木の生育環境に対する成長応答(growthresponse~(1))を把握することには意義があると考えられる。