大阪湾流域の農業用ため池を含む集水域の窒素流出負荷量予測

摘要

近畿地域では近年，農業用ため池の水質が悪化し，水質削ヒが重要課題となっている。本報では，農業由来の負荷を削減する環境負荷低減技術の効果を定量的に評価・検証する手法として，窒素の水質予測モデルを開発し，水田の削ヒ機能が下流のため池水質へ及ぼす効果を定量的に評価することを目的とした。既存の地形連鎖窒素フローモデルを，地域特性を考慮して2層式に改変して適用した結果，非潅漑期および潅漑期のため池の窒素濃度をほぼ正確に予測できた。さらに，大阪府の大和川水系東除川流域の6つのため池を対象に，ため池から水田を経由して河川に流入する過程で生じる水田での浄化効果について，地形連鎖窒素フローモデルの窒素除去量算出サブルーチンと統計値をもとに求めた。また，将来起こり得る水田面積の減少によって生じる水質変動を予測した。その結果，水田によって水質が著しく改善されていること，水田面積の減少が水質を悪化させることが予想された。