嫌気性膜分離法による下水処理技術の現状と課題

摘要

生活系排水が主体の下水は水量が多く，有機物濃度が産業系排水等と比べ低濃度であるため，好気性処理による浄化が主流となっている。しかし，好気性処理は曝気のため多くのエネルギーを消費し，また余剰汚泥の生成量が多いなどの問題点が指摘されている。低炭素社会•循環型社会を構築していくために，下水処理の技術革新が求められている。そこで近年，汚泥発生量が少なく良好な水質が得られる膜分離技術と省エネルギー•創エネルギーの効果が期待できる嫌気性処理を組み合わせた嫌気性膜分離(嫌気性MBR)法の開発が注目を集めており，研究が進められている。本稿では，嫌気性MBR法による下水処理の研究進展についてまとめた。また，従来の嫌気性処理プロセスの研究と比較しながら，嫌気性MBRの有用性を評価した。