湖沼水環境の課題と展望

摘要

湖沼法の改正等にも開わらず，湖沼水質の改善はあまり進んでいないのが現状である。霞ケ浦における水質や流入負荷の長期変化の解析をもとに，流域での物質循環が1年で閉じているわけはないこと，生態系や底泥特性などの変化により植物プランクトン組成や湖内物質循環のレジーム変化が急激に生じることを紹介し，湖沼水環境管理にさいしてはこのような特性の理解が必要であることを示す。日本や世界の湖沼の抱える水環境問題を俯瞰するとともに，環境省が行なっている取組み，たとえば新しい環境基準，湖沼法の改正，排水規制の改正，各種ガイドラインなどの検討状況を紹介する。最後に，今後の湖沼環境問題解決に向けて，環境基本戦略とのコンシステンシー，遅々としていても確実に進めるべきこと，を提言するとともに，そのためには流域物質循環の管理，コモンズとしての湖沼管理，の議論が必要との主張を述べる。