ハノイ市水道の配水および宅内給水過程における水質劣化の実態

摘要

ハノイ市の地下水または河川水を原水とする4浄水場を選定し，浄水場から配水管路，貯水槽を経て蛇口に至るまでの残留塩素，大腸菌およびトリハロメタンの挙動を調査した。その結果，浄水場での塩素注入が十分でない場合があること，残留塩素消費はおもに浄水場から貯水槽に至るまでの配水過程で生じること，地下水を原水とする浄水場ではアンモニアの影響で結合塩素が卓越しトリハロメタン濃度が低く抑えられていること，結合塩素が多い配水区域ではベトナムの残留塩素規定(全塩素0.3～0.5mg/l)を満たしても蛇口で大腸菌陽性となる場合があることなどが判明した。貯水槽内の結合塩素消費量は，貯水槽の流入遊離塩素，流入結合塩素，流出水温，滞留時間を変数とした一般線形モデルに適合した(F検定，p＜0.05)。本研究により，微生物制御と消毒副生成物抑制に関わる残留塩素管理の観点から，ハノイ市水道の改善に資する重要な知見が得られた。