牡蠣殻を利用したフッ素排水処理剤の合成とその処理性能評価

摘要

大量に廃棄されている牡蠣殻を出発原料とし，リン酸溶液を用いた湿式反応により新規のフッ素廃液用の処理剤を開発した。本処理剤は，牡賴殻の母材である炭酸カルシウム上に低結晶性の水酸アパタイト（Hap）が形成されていた。本処理剤のフッ素処理能力を評価するために，カラム管に充塡し10mg/lに調製したフッ素溶液を通水するカラム実験を行なった結果，一律排水基準値（8mg/l）を十分に満足する結果が得られた。また，通水後の溶液のpHは，炭酸カルシウムの中和効果により排水基準値の5.8～8.6の範囲内で推移していた。さらに，フッ素処理工程水を含む排水を用いた実証実験においても，一律排水基準値を満足し，すぐれたフッ素処理能力を示した。本法では，特殊な装置や試薬を用いずに室温下で簡便に高性能のフッ素処理剤を作製することが可能であり，フッ素含有排液に対する有望な方法として期待できる。