水生生物に及ぼす気候変動の影響

摘要

気候変動は生物に影響を与える大きな要因の1つである。水生生物に関しては，二酸化炭素が海水に溶け込んで起こる「海洋酸性化」の影響も考慮する必要がある。サンゴは，熱帯から温帯まで広く分布し，沿岸の生態系を構成する重要な生物であるが，水温上昇による白化，海洋酸性化による骨格形成阻害など気候変動の影響を受けやすい。日本は南北に長いため，サンゴをはじめとする南方起源の生物の分布北限が観察され，気候変動の影響を検出するのに適した地域である。日本近海の水温上昇に対応して，沖縄南では高水温による白化現象が、北では分布北上が起こっている。将来に関しては，こうした水温の変化だけでなく，海洋酸性化を考慮する必要があり，将来のサンゴの分布域は二酸化炭素の排出シナリオに大きく依存している。こうした観測事実と予測結果に基づき変化への適応計画を立案する必要がある。