ベトナムにおける生活雑排水処理装置導入へのビジネスモデル評価

摘要

ベトナムでは，生活排水の処理が十分ではないことから，公共用水域の水質汚濁が深刻となり，観光資源等にも影響が生じている。そこで，ベトナム国内の一般家庭から排出される生活雑排水の現状把握と，その対策として生活雑排水原単位調査と生活雑排水処理装置(新浄化装置)の導入調査を行なった。また，新浄化装置が普及した場合における経済，環境および社会への影響を把握することを目的として，3層式ビジネスモデルキャンバス解析を行なった。その結果，新浄化装置の使用方法等に対する利用者の理解に関する課題や技術的な課題は残ったが，新浄化装置が本来の処理機能を発揮し生活雑排水を適切に処理することで，ベトナムの水環境への負荷低減に寄与できることが示された。ベトナムの生活雑排水原単位は，日本の生活雑排水原単位に比べ，BODではより小さく，SSとT-Pは同程度あり，NH4-Nでは，日本のおよそ27倍であることが示された。環境技術の普及や移転のさいに3層式ビジネスモデルキャンバスにより，環境技術による環境改善効果だけでなく，普及や移転に伴うSDGsの達成や経済や社会への影響を把握することができることが示された。