山地流域における自然貯留の洪水緩和機能に関する方法論的考察

摘要

「緑のダム」に対する賛否の議論が行われている。森林でおおわれた山腹斜面にある土壌が雨水貯留による洪水緩和機能を担うこと自体は学会でも広く理解されている（鈴木，1996；谷，2006）が，それには限界があると説明されることが多い。日本学術会議（2001）による答申（平成13年11月「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について（答申）」）は，「治水上問題となる大雨のときには，洪水のピークを迎える以前に流域は流出に関して飽和状態となり，降った雨のほとんどが河川に流出するような状況となることから，降雨量が大きくなると，低減する効果は大きくは期待できない。