電子遷移誘起脱離研究の先駆者，石川義興博士および太田芳雄博士の業績紹介

摘要

石川義興博士は京都帝國大學（現，京都大学）理學部化學教室において白金表面上に吸着した分子の電子刺激脱離（electron stimulated desorption，ESD）の実験を系統的に行ない，1942-1943年に数報の論文を発表して基底状態から励起状態への電子遷移の結果として脱離が起きるという電子遷移誘起脱離（Desorption induced by electronic transitions，DIET）の概念を初めて提唱した．この業績は有名なMenzel氏とGomer氏，Redhead氏の研究より22年も早い．石川氏の業績は海外では広く認められており，多くの総説や論文においてDIET分野における先駆的研究として紹介されている．