内部および表面の鋳造欠陥を起点とするアルミニウム合金ダイカストの超長寿命疲労特性

摘要

超音波疲労試験により，共晶Al-Si-Cuダイカスト合金D10FM-T6材の疲労強度評価を行い，超長寿命域（～10~(10)回）の疲労強度に及ぼす鋳造欠陥の影響について検討した結果，次の結論を得た．（1）内部欠陥起点形と表面欠陥起点形のS-N曲線は異なる．表面欠陥起点形のS-N曲線は，10~7回付近で折れ曲がるような挙動を示すのに対し，内部欠陥起点形のS-N曲線は，破損繰返し数の増加に伴い低下する挙動を示す．（2）疲労き裂発生起点が内部の鋳造欠陥の場合，N_f＞1×10~8回にて疲労き裂発生起点の鋳造欠陥周りに，組織より微細な凹凸模様（ODAと記す）が認められた．N-f＞10~(10)回の末破損試験片を，強制的に疲労破壊させた破面にはODAは認められず，巣欠陥からの疲労き裂の発生，もしくは進展がなかったことを示しているものと考えられる．（3）(area)~(1/2)パラメータモデルによるσ_a/σ_wから，表面欠陥起点形および内部欠陥起点形とも狭いバンドで表現できる．表面欠陥起点形の場合は，σ_a/σ_wが約0.7付近で破断/未破断の境界が存在し，内部欠陥起点形の場合は，σ_a/σ_wが約0.5付近で破損/未破損の境界が存在する．（4）10~7回以上の破断/未破断試験片のΔK_(CD)∝((area)~(1/2))~(1/3)と，(area)~(1/2)パラメータモデルでのΔK_(th)∝（(area)~(1/2)）~(1/3)関係を比較して補正することにより，σ_a/σ′_w＝1.0で破損/末破損の現象を説明することができる．