赤外自由電子レーザーの分光学•分子科学への応用

摘要

東京理科大学が所有する赤外自由電子レーザー(FEL-TUS)は，高出力ピコ秒パルス光を発振しかつ中赤外領域(5〜10μm)で周波数可変という特徴を有している。このスペクトル領域は指紋領域とも称され，分子や分子集合体の振動励起エネルギー帯に対応する。FEL-TUSが有する高エネルギー分解能と波長可変性は，特定の分子のある特定の振動モードを選択的に励起することを可能にし，またその高い光子密度は赤外多光子吸収による分子の高振動励起状態の生成を通じた化学反応を駆動することができる。本稿では分子科学と分光学を中心にして，FEL-TUSの利用によって初めて達成することができた研究成果について概観する。