「ポスト•コロナ」の世界経済の行方: 新興国からの視点

摘要

はじめに、2020年の世界経済にとって最大のリスク要因となったのは、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)であったのは誰もが疑う余地のないことであろう。さらに、近年の高い経済成長を背景に世界経済のけh引役となってきた中国が当初の感染拡大の中心地となったとなったことは、世界経済を卷き込む形で大きな混乱を招く一因になつたことは間違いない。ただし、中国については比較的早期に感染封じ込めに成功するとともに、経済活動の再開に大きく舵を切ったほか、その後の景気は底入れの動きを強める展開が続いている。一方、近年において中国経済への依存度を高めてきたアジアを中心とする新興国や資源国などでは、中国経済の底入れの動きは景気の押し上げに繋がっているものの、各国内における新型コロナウィルスの感染動向が景気の足かせとなるなど難しい状況が続いている。また、全世界的な金融緩和を受けて国際金融市場は『カネ余り』の様相を一段と強めるなか、新型コロナウィルスのパンデミックによる世界経済の減速や、感染対策による財政出動の動きにより多くの新興国では経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が悪化しており、国際金融市場の環境による影響を受けやすくなつている。本稿では、「ポスト.コロナ」における世界経済の行方を新興国からの視点で眺めてみることにしたい。