有限変形理論と微小変形理論

摘要

連続体力学は，物体の運動•変形やそれにより発生する応力の適切な記述，力のつり合い，応力と変形を関係付けて材料特性を記述する構成則といった力学の基本法則に関する理論体系であり，対象範囲とする物体の変形や回転の大きさによって有限変形理論と微小変形理論に大別される。両理論の相違点を示すことが今回の趣旨であるが，各々別の出発点から構築された理論ではない。有限変形理論は物体の変形や回転の大きさに制限を設けることなく力学挙動を厳密に表現する一般性のある理論である。これをベースとし，変形と回転が微小という仮定の下での近似から導かれるのが微小変形理論である。逆に，微小変形理論を拡張•一般化して有限変形理論を構築することは必ずしもできない。