南海トラフ巨大地震•津波発生の真実にせまる : 強靭な社会の構築に向けて5.南海トラフのスロー地震と断層活動

摘要

本章では，西南日本や2011年東北地方太平洋地震に おけるスロー地震の研究事例を中心に概観し，スロー地 震と巨大地震との関連について述べた。これらの成果は， 主として1990年後半以降整備された地震•地殻変動観 測網に依るところが大きい。日本海溝や南海トラフにお いて，今後海底ケーブル式の地震•地殻変動観測網の整 備が進むなか，巨大地震の発生予測及び被害軽減に向け て，特に沈み込み帯におけるスロー地震及び巨大地震と 関係に関する研究のさらなる推進が必要である。これら の研究は，地震学や測地学などの地球物理学手法に限ら ず，岩石学的•地質学的な視点からの調査•研究も含め， 学際的な取り組みが今後，特に重要となる。