ケイ酸とケイ藻

摘要

火山国である日本の陸水のケイ酸濃度は概して高いが,琵琶湖水では顕著に低い。これは小林純著「水の健康診断」で特記されていたことの1つである（岩波新書，1971年）。ただし，ケイ酸自身が汚染物質ではないため，環境問題の文脈で取り扱われることは少なかった。その中で，A·ウェーゲナー海洋研究所によるエルべ河口海域のモニタリング結果は興味深い。すなわち，1960年代には春期のケイ藻のブルーム終了期に無機態窒素が枯渴していたが，1980年代ころになると，リン•窒素流入増大のためか，ケイ酸が枯渴して窒素が残留するようになった。これと符合するように夏期の渦鞭毛藻のブルームが顕著になったというのである。