処理状況をみる: 生物相による活性汚泥の処理診断

摘要

特定の地域に生息•生育する生物の種類と組成を生物相という。活性汚泥には細菌類,真菌類,原生動物,藻類,小動物などが出現するが,原生動物と小動物および一部の細菌類をまとめて「活性汚泥の生物相」さいう。活性汚泥の生物相診断は出現している生物の種類および量によって,処理状態を診断する技術である。活性汚泥の生物相は古くから維持管理に利用されてきた。生物相診断の長所はサンプルと顕微鏡さえあれば,その場で診断結果がわかること,過去から現在までの経過がわかること,処理状況が変わった場合,ある程度原因が把握できることである。たとえば汚泥沈降性の悪化には原因が①髙負荷②酸素不足③低負荷©糸状性細菌⑤毒物混入などあるが,顕微鏡で観察することで特定が可能となる。対策は原因によって異なるため,対策がすぐに取れる生物相診断は有効な手段である。短所は運転条件を変えた直後は,生物相が安定していないため診断ができないこと,診断するにはある程度の熟練が必要なことである。下水処理場の多くの水質試験室では,分析項目のひとつとして微生物の個体数を計測している。せっかくの計測結果も分析結果だけでは,状態の良し悪ししか判断できない。そこで定期的に個体数を計測している微生物種を処理診断指標に沿ってグループ分けし,各グループの生物個体数の計測結果を前回の計測結果と比較することで,簡単な処理診断ができるような診断方法を紹介する。本稿ではグループ分けの方法と,簡単な生物相診断用シートの作り方および生物相診断方法について述べる。