高温高圧水を用いた有機フッ素化合物および有機ケイ素化合物の分解•無害化，再資源化反応の開発

摘要

有機フッ素化合物は耐熱性や耐薬品性等の優れた性質を持つ高機能物質である。一方で環境残留性が高いこと，廃棄物の分解処理が難しいこと，さらにはペルフルオロオクタンスルホン酸(C_8F_(17)SO_3H,PFOS)やペルフルオロオクタン酸(C_7F_(15)COOH,PFOA)を中心に，生体蓄積性が無視できないものがある,といった負の側面が近年になって顕在化している。その環境負荷の低減のためには有害性の度合いに応じて廃棄物の無害化を行う必要があるが,C-F原子間の結合エネルギーはC原子が形成する共有結合では大なため簡単に分解しない。高温で焼却することは可能であるが,発生するHFガスによる炉材の劣化が著しい。このため，例えばフッ素ポリマーの焼却処分を受託できる企業は4社しかなく，しかも減少している(2014年には5社，2012年には6社あつた。受け入れについても地域限定などの条件がある)。また，2009年にストックホルム条約で附属書B物質(製造や使用の制限)に指定されたPFOSを含有する泡消火剤の在庫処分もあまり進hでいない(2020年調査で338.8万L，2016年では396.4万L)。これらの物質をフッ化物イオン(F~-)まで分解できれば，既存の技術によりCaF_2に変換できる。CaF_2の鉱物は蛍石で，酸処理によりすべての有機フッ素化合物の原料であるフッ化水素酸になるため，入手に制約が多いフッ素資源の循環利用にも貢献できる。この場合，穏和な条件でF~-まで分解することが重要である。電子線照射等の手法を使えばフッ素ポリマーさえも分解できることは古くから知られていたが，ペルフルオロイソブテンゃテトラフルオロメタン等の有害ガスの発生が懸念される。