Bacterial Histo-blood Group Antigens Contributing to Genotype-dependent Removal of Human Noroviruses with a MicrofiItration Membrane

摘要

このたびは栄誉ある論文賞を授賞いただき誠にありがとうございました。一連の論文を推薦•選考していただきました先生方，そして日本水環境学会関係者の皆様に心より厚く御礼を申しあげます。受賞対象となつた主要対象論文や関連論文の一連の研究は，下水再生利用におけるウィルス感染リスク制御を目的としたものです。主要対象論文では，ノロウィルス粒子を特異的に捕捉することが可能な細菌が，精密ろ過によるノロウィルスの効率的な除去に貢献することを示しました。私共のグループは，ノロウィルス吸着性糖鎖である組織血液型決定抗原（A型，B型などの血液型を決めるオリゴ糖，Histo-blood group antigen: HBGA)を分泌する腸内細菌(Enterobacter cloacae SENG-6)が存在することをJournal of Virology誌上で2013年に発表しましたが，このHBGA陽性細菌をノ口ウィルス吸着材として用いることで，ウィルス粒子直径よりも大きな孔径をもつ精密ろ過膜でもノロウィルスを効率的に除去することが可能であることを示したものです。HBGAは莢膜成分中に分泌されているため，莢膜成分を取り除いたcloacae SENG-6にはノロウィルスが吸着せず，またリポ多糖上にB型抗原を有するEscherichia coli O86では莢膜成分を取り除いた場合にのみノロウィルスが吸着したことから，細菌が合成•分泌したHBGAが直接ノロウィルス粒子の捕捉に寄与していることが明らかとなりました。また，ノロウィルスには数多くの遺伝子型が存在し，HBGAへの結合様式は遺伝子型により異なることが知られていますが，本研究でもE. cloacae SENG-6への吸着効率と精密ろ過膜による除去効率が遺伝子型により異なることが確認されました。また，活性汚泥フロックにもHBGA様物質が存在していることが免疫電顕技術により確認されたことから，本研究で示したノロウイルス-細菌相互作用が実際の下水処理の場でも生じていることが示唆されました。