有明海におけるCeratium furcaとChattonella属の日周鉛直運動の特徴および躍層との関係

摘要

2002年7月29日，8月6日，2004年8月16日，23日に，有明海湾奥海域で赤潮を引き起こした植物プランクトンについて現地観測を行った。また，2002年6月から現在まで，水温，塩分，溶存酸素およびクロロフィルaの連続観測により水質鉛直分布を測定している。2002年には渦鞭毛藻のCeratium furca，2004年にはラフイド藻のChattonella antiqaとC．marinaによるものと考えられる鉛直移動が観測された。上方および下方への平均移動速度はCeratiumでそれぞれ1.7±0.3，0.4～1.0±0.3m・h~(-1),Chattonellaではそれぞれ1.5～2.0±0.3，1.7±0.2m・h~(-1)であった。Ceratiumは日没前に躍層位置の変動に連動して移動する傾向がみられたが，Chattonellaは躍層の変動とは連動せず，躍層を横切る移動形態がみられた。両種の鉛直挙動の違いは，増殖のための栄養塩摂取における生態的戦略の違いによるものと考えられた。さらに，これらの赤潮プランクトンは，躍層の下方における貧酸素化によって生じる底質からの栄養塩を摂取することにより急激に増殖することができると考えられた。