川辺川ダ厶計画をめぐる経緯

摘要

今年7月4日，熊本県南部を襲った梅雨末期の線状降水帯による記録的な豪雨で，一級河川の球磨川が氾濫し，多くの人命が失われるなど流域に甚大な被害をもたらした。球磨川水系では最大の支流，川辺川に政府が計画していた治水や農業利水などを目的とする川辺川ダム建設が2009年9月に中止され，国土交通省(国交省)，県，流域市町村が検討してきたダム以外の治水対策がまとまらずに協議が続く中で今回の水害が発生した。そのため，ダム建設計画の復活に向けた動きが今後現れることが予想され，すでにその兆しも見られる。ただ，川辺川ダム計画は，司法や行政も含めた民主的な議論と手続きを経て中止に至った経緯がある。今後の治水対策は，今回の水害についてしっかりと検証することはもちろh，地球温暖化に伴ってさらに激甚化が予想される豪雨についても考慮した上で，ダム建設をめぐるこれまでの経緯を踏まえて考える必要がある。