京大·浅岡氏に数学会賞春季賞

摘要

日本数学会は、京都大学大学院理学系研究科の浅岡正幸准教授(39歳)=写真=に日本数学会賞春季賞を授与した。双曲力学系および関連する幾何学の研究が評価された。代数学賞には、荒川知幸·京都大学数理解析研究所准教授(44歳)が「無限次元リー代数及びW代数の表現論の研究」で、巿野篤史·京都大学大学院理学研究科准教授(37歳)が「保型表現とその周期の研究」でそれぞれ選ばれた。90年代から双曲力学系の研究に用いられていた手法やアイデアを幾何学の諸問題に用いることで、新しい発展を目指す研究が活発になってきた。浅岡氏は、2000年頃からそのような研究の動向を牽引する優れた研究成果を次々とあげている。浅岡氏は、双曲力学系の典型ともいえるアノソフ流の拡張概念として三松氏(中央大)によって導入された射影的ァノソフ流の分類問題を3次元の場合に解決した。また、85年にジスが示した、ある種の2次元リー群の局所自明な作用が、体積保存という条件のもとでは極めて限られたものしかないという剛性定理について、体積保存でない全く新しい作用が存在することを示した。浅岡氏はこの証明で、力学系理論の手法が一見全く異なるように見える問題の解決に本質的に貢献するということを示した。