流砂水文観測から得られた異常な土砂生産時の掃流砂流出特性と観測結果の山地流域監視への適用について

摘要

現在，直轄砂防事務所等により約100箇所において，ハイド口フォンや濁度計を用いた流砂水文観測が行われている。観測結果は，以下に示すように，砂防事業への反映が期待される。①流域における土砂動態や流砂環境の変化を監視②砂防事業の計画検討や事業評価時に活用③総合的な土砂管理計画検討時に活用近年，観測結果の蓄積が進み，短期（1出水中）から中期（概ね1〜数年程度）に及ぶ土砂流出の実態が徐々に明らかになつてきた。まだ①〜③の全てを達成できる段階ではないが，観測結果を砂防事業に反映する取り組みが重要である。そこでここでは，①に着目して，流砂水文観測結果を用いて，土砂動態の変化を把握することにより，流域内で生じる異常な土砂生産の発生状況を捉えるなど，流域監視へ適用する際の留意点を述べる。なお，ここで言う"異常な土砂生産"とは，本稿では「土石流や崩壊，天然ダムの破壊等に伴う土砂生産で，流出すると保全対象に影響を与える危険性があり，監視の対象となるべき土砂移動現象」と定義する。このうち，特に本稿では，実際に発生した土石流（2011年9月2日午前6時半頃発生）発生時の観測事例について述べるものである。